最近はカラマツの需要増で、入荷しにくくなりました。このため使用した堆肥を乾かして木材スライスを取り出し、再利用する取り組みも始めました。
乾かすために堆肥の半量を燃やしますが、そこで得られた熱を冬は牛舎の暖房に、夏は花の栽培に再利用しています。
広い北海道の十勝平野を一望できる鹿追町(しかおいちょう)。大自然に囲まれた広大な環境で生まれ育ちました。適度に脂のある、味の良い肉牛です。
和牛とホルスタイン牛の長所を引き継いでいます
だから黒い牛も、ホルスタイン柄の牛もいます
「とかち鹿追牛」は、乳をとるホルスタイン種の母牛に黒毛和牛(肉牛)をかけあわせた牛で、「交雑牛」または「F1(エフワン)※」といいます。
黒毛和牛の脂ののった柔らかな肉質を引き継ぎつつ、脂が少なめで大柄なホルスタイン種の特徴もあわせ持ち、とても味の良い牛肉です。
※一代雑種牛(first filial generation)の頭文字を取ったもの
交雑牛は、ホルスタイン種の初産を軽くする工夫の中で誕生しました。酪農家は雌牛に人工授精を施し、出産させて乳をとります。1頭あたり平均3回出産させますが、初産は母牛への負担が大きくリスクがあります。そこで目を付けたのが、ホルスタイン種よりも小さく産まれる黒毛和牛でした。
鹿追町では昭和50年代に「交雑牛」の取り組みを開始しました。その後牛乳の国内需要が高まったため、酪農業の拡大に合わせて地域ぐるみで畜産業も振興させてきました。
誕生から出荷まで全ての工程を町内で完結した牛だけが「とかち鹿追牛」として認定されます。酪農と畜産業が密に連携し、肉牛の生産を一地域で完結する例は、全国的にも大変珍しいそうです。
ユーコープが2005年に産地を指定した「川合さんちのとかち鹿追牛」の生産農場は、鹿追町の大平牧場です。牧草畑まであわせると約100ヘクタール(東京ドーム21個分に相当)と見渡す限りが敷地という、北海道ならではの広大なスケールです。
そしてここは、真冬になるとマイナス20~25度まで気温が下がる極寒の地でもあります。冬の早朝の牛舎では、牛たちの黒い顔が息で凍り付き、真っ白になっています。
大平農場では、二代目社長の川合昭夫さんと牧場スタッフの11人が一体になり、鹿追牛約4,000頭と和牛約550頭の世話をしています。
仔牛は生後1週間で大平牧場へ来ます。その際の体重は約37㎏。ミルクを飲ませるところからスタートし、25~26カ月かけて800~900㎏まで育てて出荷するまで一貫管理をしています。
大平牧場では行政や大学・諸団体と共同研究を進め、複数の資源リサイクルシステムを取り入れています。
4,500頭分の排泄物を堆肥化
フカフカなので、牛たちは居心地がよさそうです
30棟ある牛舎には、いずれも堆肥に薄くスライスした木材を混ぜ合わせたものを敷き詰めています。
堆肥に混ぜ込む木材は、通常はおがくずを仕入れて使います。しかし大平農場では近隣で伐採されるカラマツを仕入れ、自前でスライスしています。
森林組合から仕入れたカラマツ。建築材にならない細い部分の有効利用です
牧場内の木工所。堆肥づくりに適した加工方法を共同研究し、特許を取得
牛舎に敷き詰めた堆肥は、ふん尿がしみこんだところで定期的に交換し、熟成させて再び堆肥にします。そして再度牛舎に使用したり、牧草畑に撒くほか、近隣農家にも販売しています。
堆肥は熟成すると自然に60~65℃まで温度が上がり、雑菌を死滅させる効果も
生後6カ月は一番の成長期。堆肥を使って育てた牧草を特にたっぷりと与えます
堆肥の新たな活用も開始
最近はカラマツの需要増で、入荷しにくくなりました。このため使用した堆肥を乾かして木材スライスを取り出し、再利用する取り組みも始めました。
乾かすために堆肥の半量を燃やしますが、そこで得られた熱を冬は牛舎の暖房に、夏は花の栽培に再利用しています。
新たに建設した燃焼炉。堆肥を燃やし、熱エネルギーとしても利用している
< 2017年3月25日更新 >
「食べてくれる人皆にハッピーになってほしい!」これが私の想いです。
安全・安心と本当のおいしさを求めて続けて約30年になります。交雑牛は育て方次第で味が良くなります。だから格付け評価だけにまどわされない“食べて本当においしいと感じる牛肉”をめざしています。
和牛は手間暇かけた芸術品ですが、毎日食べるには脂がきつい。それに対して、ちょっぴりハレの日などに家で気軽に食べていただける、おいしくて食べやすい牛肉の生産と研究を続けています。さらに、肉の部位ごとに味の違いを楽しめる文化も作っていきたいと思っています。