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内閣府他2省庁に「GX基本方針ならびに原子力政策に対する意見」を提出しました。

2023年1月19日

1月19日(木)、内閣府・経済産業省・資源エネルギー庁に「GX基本方針ならびに原子力政策に対する意見」を提出しました。
全文は以下の通りです。

(※以下はテキスト版です)

2023年1月19日

GX基本方針ならびに原子力政策に対する意見

生活協同組合ユーコープ  
代表理事理事長 當具 伸一


 2022年12月、日本政府は、従来の原子力政策を転換する内容を含んだ「GX実現に向けた基本方針」「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」、「原子力利用に関する基本的考え方」を公表しました。その内容は、既設原子力発電所の運転期間の延長、次世代革新炉の開発・建設など原発の積極活用を図るものとなっており、これまでの「可能な限り原発依存度を低減する」としていた従来の政府方針を転換するものです。

 生活協同組合ユーコープは東日本大震災以降、エネルギーのあり方として「電力の原子力発電の依存度合いを段階的に引き下げ、最終的に原子力発電に頼らない社会をめざす」「電力における原子力と化石燃料を中心としたエネルギー政策を見直し、再生可能エネルギーの導入促進・拡大をめざす」「大規模一極集中、地域独占型の電気事業のあり方の見直しを求める」「エネルギーの使用量を減らす社会環境づくりを進める」との考え方を掲げてきました。原発の積極活用を進めようとする今回の方針は、消費者・組合員の願いに反するものであることから、下記のとおり、見直しを求めます。 




1.今回の報告書に示された原子力発電の積極活用を図る方針は、従来の政府方針を転換するものであり、エネルギー基本計画の内容とも整合しません。広く国民が議論に参加できる機会を保障し、国民的な合意の上で原子力利用の方向性を確認すべきです。

 今回の方針は、既設原子力発電所の運転期間の延長、次世代革新炉の開発・建設など原発の積極活用を図るものとなっています。東日本大震災における東京電力福島第一原子力発電所事故以来、政府は原発の新増設や建て替えには言及しておらず、エネルギー基本計画でも「再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」と記載しており、原発の積極活用を図る今回の方針は、従来の政府方針を転換するものであり、エネルギー基本計画の内容とも整合しません。

 また、今回の方針は、GX実行会議を中心に限られたメンバーによって、4カ月という短い期間で策定されました。原発に関する政策については、丁寧に情報を開示し、広く国民が議論に参加できる機会を保障した上で、国民全体の合意を持って決定されるべきです。

2.気候危機回避には2030年までの温室効果ガス排出削減が重要であり、原子力や火力発電に依存せず、再生可能エネルギーの主力電源化を脱炭素社会に向けた主軸に据えるべきです。

 気候危機のリスクを低減するためには、2030年までの温室効果ガスの排出削減が決定的に重要だとされています。今回の方針では、脱炭素社会の実現に向けて、火力発電所における水素・アンモニアの混焼や次世代革新炉の開発・建設が掲げられていますが、両者ともに2030年という期限には間に合いません。コストと人材は限られていることから、原発や火力発電に固執せず、再生可能エネルギーの主力電源化を脱炭素策の主軸に据えるべきです。

 あわせて、第6次エネルギー基本計画で2030年度に36~38%とされている再生可能エネルギーの電源構成を、国際水準である50%まで高めることを求めます。

3.安全性への懸念から原発の運転期間の延長は実施すべきではありません。また再稼働についても慎重に対処すべきです。

 もともと原発は30年ないし40年を設計寿命として建設されています。福島第一原子力発電所の事故後に40年以上の運転を原則として認めない運用にしたことは、技術的事実をふまえた上で、原発依存を低下させるという政策的判断を法制化したものです。停止期間を含めて60年を超える運転期間を可能とすることは、リスクを高め、老朽化対策などのコストの増大にもつながります。原子力発電に関する諸問題が解決されていない中での運転期間の延長はすべきではありません。
 また、既存原発の再稼働に向けた動きについても、再稼働が認められる条件が整っているとは言えず、安全性の視点から慎重に対応すべきです。

4.2030年までの温室効果ガス排出削減につながらず、リスクとコスト負担を生じさせる次世代革新炉の新設に取り組むべきではありません。

 前述のように、気候変動の悪影響を回避するには2030年までの排出削減が決定的に重要ですが、次世代革新炉の新設には計画から少なくとも10年から20年かかり、その間の電力供給やCO2排出削減について何ら貢献することはありません。
 また、一旦稼働すれば、少なくとも40年の稼働が固定化し、その間のエネルギー政策を縛り続け、再生可能エネルギー導入の足かせとなる恐れがあるほか、放射性廃棄物の処分や廃炉などで将来世代にリスクとコストを負担させることになりかねません。次世代革新炉など原子力発電所の建て替えや新設は見送り、原子力発電に頼らない政策に転換すべきです。

以上