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経済産業大臣あてに「エネルギー基本計画見直しに関する意見」を送りました

2021年3月 1日

3月1日(月)、経済産業大臣あてに「エネルギー基本計画見直しに関する意見」を送りました
全文は以下の通りです。


経済産業大臣
梶山 弘志 様

エネルギー基本計画見直しに関する意見

生活協同組合ユーコープ  
代表理事理事長 當具 伸一

東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機として、エネルギー政策は広く国民の関心事となりました。生活協同組合ユーコープでは、東日本大震災以降、エネルギーのあり方として「電力の原子力発電の依存度合いを段階的に引き下げ、最終的に原子力発電に頼らない社会をめざす」「電力における原子力と化石燃料を中心としたエネルギー政策を見直し、再生可能エネルギーの導入促進拡大をめざす」「大規模一極集中、地域独占型の電気事業のあり方の見直しを求める」「エネルギーの使用量を減らす社会環境づくりを進める」とした考え方を掲げてきました。

持続可能な社会の実現に向け、2018 年度にIPCC が1.5℃特別報告書で「2050 年のCO2 排出量を実質ゼロにする必要があること、2030 年には2010年比で約45%削減が求められること」を提起したように、気候変動対策の強化は焦眉の課題です。2020 年からのパリ協定本格運用開始や、2020 年10 月の菅首相による「2050 年カーボンニュートラル(CO2排出実質ゼロ化)」発言などを踏まえれば、2050 年カーボンニュートラルの実現に向けて、今回のエネルギー基本計画の見直しは特に重要なものになると考えます。

上記を踏まえ、エネルギー基本計画の見直しにあたり、持続可能な社会の実現につながる計画となるよう、下記6点を要望します。


1.エネルギー使用量の大幅削減を目指す計画とし、省エネルギー推進のための施策を強化してください。
電力需要は東日本大震災以降減少傾向が続いており、今後もさらなる減少が続くと見込まれます。また、2050 年カーボンニュートラルの実現に向けては、省エネ施策の一層の促進が不可欠です。次期エネルギー基本計画は、これらを踏まえ、エネルギー使用量の大幅削減を目指す計画とすべきです。加えて、省エネの一層の進展のために、住宅用太陽光発電や高断熱住宅の普及、AI・IoT を活用したエネルギー利用のスマート化など、より効率的なエネルギー利用とともに地域経済の活性化にも資する施策を強化してください。

2.原発稼働ゼロに向けた工程を具体化するべきです。
東京電力福島第一原子力発電所の事故が未だ収束しないばかりでなく、使用済み核燃料や核廃棄物の処理方法も確立していません。そのような中、原子力発電所の再稼働についてはさまざまな議論が飛び交い、国民的な合意に至っていないと考えます。こうした状況において、再稼動を行うべきではありません。現在のエネルギーミックスの「原子力20~22%」という目標数値への到達が全く見込めない状況であることを鑑みても、原発稼働は将来的にゼロを目標とし、その工程を具体化するべきです。

3.再生可能エネルギーの導入目標を50%以上とし地域分散型へ転換すべきです。
IPCC 特別報告書は、1.5℃目標を達成するシナリオとして、2030 年の時点で世界の電力の48%から60%を再生可能エネルギーで供給することを想定しており、「自然エネルギー5~6割」は、国際的に見れば「2030 年」の目標水準です。エネルギー資源が少ない日本にとって、再生可能エネルギーは潜在的なポテンシャルが高いばかりでなく、緊急時の分散型電源、地域経済の活性化への寄与・雇用創出など多くのメリットも期待されます。現在の日本の技術や設置に関わる条件を勘案しても、2030年には50%以上の導入をめざすべきです。

4.火力発電については、石炭火力は2030 年ゼロを目指すべきです。
日本における温室効果ガス総排出量の4 分の1 が石炭火力発電所からの排出であることを考えれば、「パリ協定の長期目標と整合」をとりながらこの稼働を持続させることは現実的ではありません。さらに、石炭をはじめ化石燃料産業からの投資撤退の動きが世界的に加速し、CCS(CO2回収・貯留)付き石炭火力発電所については、コスト面や実用化の遅れが指摘されているところです。こうした状況を踏まえれば、石炭火力発電所の新設は高効率発電所を含め行わず、2030 年ゼロを目指し、具体的な段階的廃止計画を立てるべきです。当面の調整力電源としては、天然ガスの安定調達を確保しながら、石炭火力から天然ガス火力へのシフトを図るべきです。

5.カーボンプライシングなど経済的手法を積極的に検討すべきです。
日本では、CO2 排出量に応じた税率を課す税制として、地球温暖化対策税が導入されていますが、炭素税導入国と水準比較した場合、税率は他国に比べて非常に低いことが指摘されています。炭素税をはじめとしたカーボンプライシング(CO2排量に応じたコスト負担)などの経済的手法を通じて温室効果ガスの「見える化」を行い、温室効果ガスを排出しない商品やサービスの開発・普及を促進することで、消費者が脱炭素化に資する商品・サービスを選択できる環境整備を進めるべきです。

6.エネルギー基本計画に幅広い国民の声を反映させてください。
エネルギー基本計画の策定にあたっては消費者の参画を保障することが不可欠ですが、とりわけ2050 年カーボンニュートラルの実現に向けたエネルギー基本計画の検討という趣旨からすれば、将来世代の参加が重要です。また、気候変動問題に対し提言を重ねてきた環境団体の知見も有効であり、検討に際しては若い世代や環境団体の実質的参加の場を確保するなど、ステークホルダーの幅を広げるべきです。また、脱炭素社会の構築に向けては、消費者・生活者による日常的な消費行動の転換が欠かせないことから、消費者の理解促進や主体的な消費行動につながるような形で計画内容の周知・広報を進めてください。
以上
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