現地に行き、自分の目で見ることで知る被災地の「今」(mio3月号より)

2020年2月26日

東日本大震災から9年。震災当時に比べると、被災地のことを知る機会が減っていますが、復興はまだまだ進んでいないのが現状です。

ユーコープでは「震災を忘れない」という思いを込め、年に数回の福島県訪問を実施しています。

2019年11月、コープふくしまの方に同行していただき、公募で選ばれた組合員28人が被災地を視察しました。

震災直後と変わっていない景色を目の当たりに

組合員を乗せた大型バスは、首都圏と仙台をつなぐ常磐自動車道を走り、福島県に入りました。車窓からは、のどかな田園風景が望めます。

「先ほど通過した地域は、原発事故による避難指示が解除されて2年半以上になります。しかし、戻ってきた人は約1割しかいません。戻ったとしても近くにお店や病院など生活に必要なものが整っていないのです」と話すのは、コープふくしまの宍戸さん。
避難指示が解除されている地域では、外観がきれいで住むのに問題がなさそうな家屋も多く見られました。しかし、人が戻っている気配はほとんどありません。「震災は突然のことでした。急な避難で、家の中は放置状態です。物が腐り、小動物に荒らされているので、とても住める状態ではないそうです」。のどかな田園風景とは掛け離れた町の現状を聞き、車内は静まり返ります。

そのままバスは進み、避難指示が解除されていない地域に入ると、大量に積み上げられた黒い袋が目に入ります。フレコンバッグと呼ばれる除染作業で出た土や廃棄物が入っている袋です。中間貯蔵施設が開設され、以前より仮置き場に積まれている数は減っているそうですが、それでも大量に積み上げられた黒い袋には、かなりの威圧感があります。

現地に行き、自分の目で見ることが支援につながる

「被災者の中には、仮設住宅から元の家や復興公営住宅に移った人もたくさんいます。でも、周りの家には戻ってきていなかったり、新しい場所は知り合いがいないこともあり、仮設住宅にいたころよりも孤独を感じてしまう人が多いのです。
現地では一部不通になっていたJR常磐線の全線開通や、オリンピックの聖火リレーなど明るい話題もありますが、本当の意味での復興には、まだまだ時間がかかります。実際に来ていただくことが支援につながると思うので、自分の目で福島を見てほしいです」と宍戸さんは話します。

まずは、被災地の現状を知ることが支援への一歩になります。今後もユーコープでは、被災地の復興を応援するさまざまな取り組みを続けていきます。

参加者の声

「報道されている部分しか知りませんでしたが、自分の目で見ることの大切さを実感しました」(竹内さん)

「何度か福島県を訪れているので少しずつ変わってきていることは分かるけれど、人が戻ってきていない事実に愕然(がくぜん)とします。自分が見た現状を、周りの人に話すことが支援につながると思うので、まずは帰ったら家族に伝えたい」(小堀さん)

「約4年前に、子どもと一緒に参加しました。その後どうなっているか気になっていたので、現地の様子を見ることができてよかったです」(水島さん)