重要なお知らせ

新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた意見表明を行いました

2014年1月 7日

12月30日、生活協同組合ユーコープは、理事長名で、
新しい 「エネルギー基本計画」策定に向けた意見表明を経済産業省に提出しました。

全文は下記のとおりです。

 

平成25年12月30日

生活協同組合ユーコープ 理事長 當具 伸一

 

新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた意見

 

     総合資源エネルギー調査会基本政策分科会が平成25年12月に公表した『エネルギー基本計画に対する意見(案)』について、消費者である市民の立場から意見を申し述べます。 東日本大震災と同時に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故発生から、間もなく3年が経過しようとしています。

     しかし、事故の影響は広く国民に及び、現在も人々の人生や生活に影を落としています。中でも、放射線に汚染された地域では今でも10万人を超える人々が避難生活を余儀なくされ、未だ多くの方が帰還の目処さえ付かない状況です。また、汚染水問題を含む事故処理や廃炉作業も立ち遅れ、国の原子力行政、電力各社の安全対策に対する信頼は失墜し、多くの国民が原子力発電所の再稼動に反対していることは世論調査の結果でも明らかになっています

     こうした国民世論にも関わらず、今回の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の『エネルギー基本計画に対する意見(案)』は、原子力発電を「エネルギー需給構造の安定性基盤となる重要なベース電源」とし位置づけただけでなく、未だに稼動の目処が付かないばかりでなく、再処理技術の実現性が疑問視されている核燃料サイクルを「これまでの経過を充分に考慮し関係自治体や国際社会の理解を得つつ、着実に推進する」としています。

     2012年に実施した「エネルギーと環境に関する国民的議論」では8万9千件のパブリックコメントが集まり、そのうち「原発ゼロ」を求める声が8割を超えました。今回の総合意見調査会の意見は、パブリックコメントに寄せられた意見を無視し、多くの国民の意見と大きく乖離しており、国民の原子力政策に対する不信を払拭しないばかりか、原子力に対する不安を更に増すものであると言わざるを得ません。

     以上の基本的見解を踏まえ、当生協の意見を下記に述べます。

 

1.電力の原子力に対する依存度合いを段階的に引き下げて、最終的に原子力に頼らない社会を目指すべきと考えます。

(1)既設の原子力発電所については、安全対策の実施と安全性評価の過程を公開し、国民的理解と地元の理解を得ること無く、
     再稼動を強行しないでください。

(2)老朽化及び地震や津波による事故のリスクが高い原子炉は、法の基準を厳格に適用して廃炉にしてください。

(3)新たな原子力発電所の建設計画は凍結し、原子力発電所は新設しないでください。

(4)核燃料サイクル政策については、再処理技術の実現可能性に問題があり、さらに核廃棄物の最終処分場設置も困難なことから、
     計画を見直し原子力の研究開発は将来に向け、核廃棄物の安全な処分方法を確立させ、国民の不安解消を進めてください。

 

2.電力における原子力と化石燃料を中心とした政策を転換して再生可能エネルギーの導入促進を目指すべきであると考えます。

(1)再生可能エネルギー導入が更に促進されるように施策を強化してください。

(2)再生可能エネルギーは地域の多様な資源を生かし、新たな雇用や成長を生み出す可能性を持っています。
     さらに、分散型エネルギーであることから非常時のリスク分散も期待されます。
     「エネルギー基本計画」で述べられた施策を前倒しで実施してください。

 

3.電力システム改革は基本計画案どおり確実に実行してください。

(1)電力会社の地域独占体制を改め、発送電分離を含めた家庭用を含めた全面自由化を行い、消費者・需要家が主体的に
     電力を選べる仕組みを構築してください

(2)原子力、火力を中心とした一極集中型の電力システムを大きく転換して、それぞれの地域の特性に合った再生可能エネルギーの
     発電エネルギーミックスを構築してください。また電気料金は大幅に上昇することがないように推進してください。

(3)国民の省エネルギーを進めるために、エネルギーの見える化や省エネルギー技術の普及が必要であると考えます。
     スマートメーターの導入やスマートコミュニティーの実現を滞ることなく計画通りに進めてください。

(4)過度なエネルギー消費型の社会・経済体系を改め、人々のくらしや産業のあり方などを見直すため、国民の理解が進むよう
     教育機会の設置と情報発信を進めてください。

 

4.エネルギー基本計画に国民の声を反映させてください。

(1)エネルギー基本計画において「安全性」「安定供給」「最小の経済負担」「環境負荷の抑制」の基本的視点が必要であることは勿論のこと、
     今回の事故を踏まえ「国民の参加」を加えてください。

(2)国の行く末を左右するエネルギー基本計画の策定にあたり、今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故を教訓にするのであれば、
     審議会の議論とパブリックコメントだけでは不十分です。国民が政策の形成過程に参加できる仕組みを作ってください。